代表理事のご挨拶
日本老年薬学会について
我が国の人口の28%が65歳以上、うち半数は75歳以上の後期高齢者という時代を迎えました。特に、後期高齢者の半分は大きな疾患を有し、3割は要介護状態にあるという現状が医療介護に大きな課題を突き付けています。都市部の高齢化が今後顕著なことを考えると、大都市の基幹病院でも、今後は必然的に高齢者医療の波を被ることになるでしょう。このように、我々が今後直面する高齢者医療は、元気に通院する前期高齢者ではなく、多病と老年症候群、日常生活障害を抱え、しばしば救急搬送される後期高齢者を主な対象としたものになると考えられます。つまり、臓器横断的で生活環境にも配慮した包括的な医療が必要なのです。
そのような社会変化の中で、ポリファーマシーをはじめとする薬学上の喫緊の課題に対応するべく誕生したのが老年薬学という新たな学術分野であり、2016年1月に設立された日本老年薬学会です。設立目的に謳われているように「高齢者の薬物治療に関する実践と研究の振興及び知識の普及、会員相互及び内外の関連学会との連携協力を行うことにより、老年薬学の進歩を図り、もって我が国における高齢者医療の発展に寄与し、社会に貢献することを目的とする」ことを考えると、今後益々の発展が期待されます。
本学会は、老年薬学に関する研究と教育を推進する学術団体ですが、高齢者の薬物療法を適正に実践できる薬剤師の養成を目的として老年薬学認定薬剤師制度を設け、現在約300名(暫定を含む)を認定しています。また、認定薬剤師養成のために指導薬剤師30数名を認定しています。本学会の会員数も現在1,700名強と年々増加しています。皆さんも是非、日本老年薬学会の会員、あるいはさらに認定薬剤師となっていただき、ともに将来の高齢者医療を支える役目を担いましょう。
日本老年薬学会代表理事
東京都健康長寿医療センター長
秋下雅弘